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3 修理ルポ~ A)キーボード編
当方で行っている修理の実例をご案内しましょう。
今回は、ExcelsiorのMML 37鍵120ベース。

症状 「鍵盤を押さないのに音が鳴る。バリバリというノイズが出る。キーの動きが緩慢。ベローまわりの修復」
この楽器は由緒ある「うたごえ」酒場で活躍してきた。もう40年近く働いてきた楽器だ。
ヤマト宅急便で1000Kmの長旅をして、わがクリニックの診察台のうえに横たわっている。その汚れ、へこみ、鍵盤のべっこう色の変色を見ると想像できますか。どんな過去をもっているか。
左右のグリルボタンは、なんとガムテープ。Excelsiorのロゴは全て、どこかへいってしまった。ジャバラのリブはすれてベローの色も変わってしまった。それだけではない。ジャバラを動かすとすかすかで、しかもキーを押さないのに複数の音が出る。鍵盤は、いくつかスタック(押したまま戻りの鈍いキー)している。
実はこういった「ひん死」の状態で、当クリニックに持ち込まれるにはそう、珍しいことではない。
広い日本には、今やおそしと''重症楽器''が再生される日を待ち望んでいるのだと思う。
3-1 鍵盤のオーバーホール
・修理調律で、一番最初に手をつけるのが鍵盤部分。 左の空気開閉バルブも同様に最初に
チェックする。
・なぜ最初に鍵盤なのか? その理由は、内部リードの良しあしも、鍵盤が正常に作動してはじめて、意味をもつ。
たとえば、スタックや、キーパッドからのエアもれ、異音(こすれ音、金属に当たるようなノイズ)
をそのままにしておくと、トラブルは永久に続くことになる。


①グリルカバーをはずす
②スイッチの基盤を分解して本体からはずす
スイッチの左に
伸びた金属の太い線は、先が特殊な留めワッシャで固定されている。ピンセット
ピンセットや、細いキリのようなもので、ワッシャを外す。
このワッシャは特殊なサイズなので、決して無くさないことだ。
3-2 キーボードを分解する

次に行うのが、 鍵盤のアクセル(芯棒)を抜く作業。
鍵盤にむかって、右はしの本体との接合部をよく見ると
金属カバーが2つの小ネジで留っている。
それを取り外す。
それから、強力なペンチでのぞいた芯棒(通常2本。 黒鍵用
と白鍵用が独立していることが多い)を抜く。
*一部仕様ではコイルばねで鍵盤をじかにとめる仕様もある
(これはばねはずしではずせばすぐ分解できる)
外した鍵盤はナンバーが記入されているかどうか、チェック。
もし記入されていない場合や、うすくて読みにく場合は番号を
書き直し。
うっかり間違えると動かないキーになる。
作業上も少し広い鍵盤入れ(当店では段ボールで作成。
むかし、
農家で使っていたトオミのような形が使い良い)
を使う。
次に行うのが芯棒のさび落とし。
長い年月支えてきた芯棒はところどころサビがでている。
鍵盤にはたくさんのほこり、ゴミがたまっている。
それを刷毛ではきながら、掃除機ですいとっていく。
この細かいほこりは、ジャバラの開閉のたび、本体にすいこまれ.,
押したときは周囲に飛散し、それを肺に吸い込むので衛生上好ましくない。
カビがあるばあいは、消毒用アルコールなので、拭いて根っこから
取り去る。
グリル表面(アルミ合金)のクリーニングも必要。長い年月で、しみ、かびなどが
付着しやすい。
(実は、調律のときは、マスク着用する。これは身を守る長年の知恵。
以前、のどを痛めたことがある。)
どんだけホコリが飛ぶかの実験。朝陽を受けてジャバラの
開閉。
あたり一面飛び散るホコリが朝陽に当たり幻想的でもある
)
3-3 鍵盤のさびおとし、クリーニング
1つ1つの鍵盤について以下のことを行う。
①外観のチェック
・表面材の曲がり、うきの有無、芯棒の支点部分の金具(しんちゅう)のサビ、
アームと鍵盤の固定状態、アーム先のエア開閉バルブの接地面(グリルプレート
に設置する面)の 跡 のチェック
②ごみの除去 刷毛でほこりを落とす
③表面材エッジ(ふつう厚み1mm強の表面材が鍵盤の芯材に貼られている。
その厚み分をエッジといい、ここが汚れやすい。 弾くたびに、このエッジが
見えるので、分解の折 クリーニングする。
削らない程度に、やすりや木片でぬぐう。
合わせて、鍵盤手前のかぶせも同様に行う。
④芯棒の支点金具のさび落とし
この部分がスタックの大きな要因。5mmていどの合成ゴムシートにウェスをくるみ、
クリーニング剤を少量つけ、磨く。
*楽器によって、支点の形状が 受け型と、差し込み型とがある。
⑤アームのよごれとり
⑥エア開閉パッドのごみ除去 この跡をよくみる。これで、グリル面との接地状態
~ 位置のずれ、変形~などがよくわかる。
⑦表面材のみがき
当クリニックでは、アルカリ性の研磨剤でみがく。 長い年月のよごれが付着しているので
根気強く、磨く。
*黒鍵のばあい、立ち上がり面の向かって左側面をとくに磨く。ここが汚れやすい。
3-4 鍵盤を入れなおす
芯棒をさしこみながら、高音域から白鍵、黒鍵の順に、交互に装着する。
・スプリングの指定位置を間違えず、入れなおす。スプリングがずれると、鍵盤の
戻りの力が変わってくる、異音が生じます。
・エア開閉パッドの位置が正確に合致しているか確認しながら入れる。
(上記 写真)
ずれがある場合、アーム用金具、ペンチ類で補正する。
本格的にはアームと駒の接合部を外し、正確な位置~エアもれがしない位置、
角度に調整しなおす。溶接は ワックスであることが多い。
・1つを入れ終わるたび、何度かキーをたたき異音の有無を確認する。
あとで、発見すると、もういちどオーバーホールすることになる。
・芯棒はかなりきつく設計されている。 途中で、自分の手では押しきれない
ばあい、固定型ペンチなどを使って少しずつ入れる。
無理に押し込んだり、金づちでたたくと、支点の木部が割れ、大きな損傷になる。
最後に、キーの高さをレベラーで測りながら合わせる。
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